新宿乞食 4

赤松は、連日会社へやってきた。もう社員に

なったかのような振る舞いである。お昼弁当を

食べている時、幹部らは赤松に個人相談を持ち

掛けていた。それを黙って聞いていれば、へどが

出そうな詐欺師の饒舌な言葉。

某幹部「僕は、結婚できますか?」そのように

赤松に聞いた30代半ばの幹部。彼は女性から

好感を持たれるタイプではなく、結婚はおろか

恋愛さえも体験し得ないタイプなのだ。

赤松:「あ、来ているよ。もうすぐ出会えるわ。

ポニーテールの可愛い女性よ。年齢はネ、28歳

かな?あら、オッパイも私よりおっきい(笑)」

某幹部「ほ、ほ、ほんとですか!
嬉しいです!」
と興奮する幹部は、

バーチャルな彼女について、しつこく聞いている。

こんな個人相談が昼休みに数日も続いたのだ。

幹部と社員もマインドコントロールされていた。

最も洗脳されていたのは、かの社長だ。

予感した通り、社長に呼ばれて、赤松と組んで、

全国セミナーをやれと言われた。しかも受講料が

ひとり100万円だと言う。

「別々にセミナーをするのはいいが、コラボを

組むのは、出来ないよ」と言えば、「日浦さん、

これは業務命令だよ!」と押してきた。

幹部らは、もうセミナーの準備を進めている。

会場の取り決め、日程、DM作成のなどなど。

僕を顧問として招いたのは、赤松&日浦の

コラボレーションセミナーをやるためだった

のだ。社長の意図は。。。

新潟での窮地を救ってくれたのは、有り難い。

だからと言って、詐欺の片棒は担げない。

セミナーをやれ、やれない、という問答は

数日も続いた。

社長は、業務命令に従えないのであれば、

会社を辞めてもらうしかないな、と言っては

いけないことを言った。辞めろと言うのは

彼の本心では無いからだ。

日浦「本当に辞めるよ 僕は」

社長「勤め先も住むところも無いと言うのに、

強がりを言わないほうがいい。金もないし」

日浦「そうなんだけどさ、詐欺師の片棒を担ぐ

より、ウソをつかなくていいホームレスがいい

かな、学生時代、乞食の経験あるし」

社長「え~?」

その日、女子社員が激しい腰痛を訴えていたので、

社長は、治してやれと言った。だから治してあげた。

彼女は、すぐさま治ったことに驚いたのだろうが、

何を思ったのか、書庫からアンケート用紙を持って

きて、セミナー受講生から、日浦さんの講演をして

欲しいと言う要望が、こんなに沢山ありますと言い、

それをコピーして僕に手渡した。そのことは社長から

指示されてやっているのだろうが、下手をすれば、

機密漏えいの問題に発展しかねない。

それは、ロッカーに入れて退社した。

 

翌朝、思った通り社長に呼ばれ、機密書類の窃盗では

ないかと追及される。それが狙いか。

警察沙汰だとか、なんとかかんとかぐずぐず言うので、

君が電話を出来ないなら、僕が警察を呼んでやるといい、

机上に在った社長の携帯から110番へ電話したら慌てて

電話を取り上げて電話を切っていた。本当に警察が来た

ならば、困るのは、社長のようなのだ。

ここから話は、また飛ぶんだよ。翼を持っていると

便利!⇦ 違うだろう。

 

その場を見切って早退し、何の目的がある訳じゃあ

ないけれど、歌舞伎町へ行ってみた。今は解体され、

新ビルになった旧コマ劇場の前面には広場があった。

観光客、ホームレス、売春姉ちゃんがたむろする場。

腰を下ろしてタバコを吸っていると、両隣のホーム

レスはタバコをくれと言う。そして、あなたは幸せ

だねと言うので、どうしてかと聞けば、いいスーツを

着て、ロレックスをつけて、革靴もピッカピカ。

うらやましいなあ、と言った。

いいや明日からさ、あんたたちと同じホームレスに

なるだろう身なんだ、そしたら先輩、宜しく!と。

そんなとことへ区役所の職員がおにぎりを配っていて、

僕の前に来た時、あ、あなたは要らない方ですね、

失礼しました、と言ったので、いえ、明日からは、

おにぎり貰うかも知れませんと。すると、区役所へ

連れていかれ、生活保護の窓口へ案内された。

担当者は、その会社は、何という名かと聞くので、

顧問の名刺をだすと、その会社のホームページを

見るからと、待つこと30分。

戻って来た担当者いわく、あの会社は辞めて正解です。

辞めさせられて正解です。いま正式に生活保護を認定

しますという展開になった。

担当者に聞いてみた。

生活保護は、月々いくらほど給付されますか?

担当者いわく、あなたはもう年金を貰っているから

月々3万5千円ほどです。

そんなに少ない・・・?じゃあ保護は受けません。

どうするの?

山に入って断食死したほうが楽ですから。

何ですって!何てこと言うの。そんな人いませんよ!

ここにいますよ。

すると、別の部屋に案内され、数名が来て、まるで

警察署の刑事課の取り調べみたいな雰囲気になった。

<中略>

 その夜もまた、マンションにて、社員その他の有志を

集めて、日浦式瞑想を教えていた。ある日、ダンティ

スダイジから瞑想を習ったと言う彼が参加したので、

生前のダイジは、どうだったのかと聞けば、ほとんど

発狂寸前でしたねという彼。あのダイジの本を読めば、

すでに発狂していたことが伺えるよなと言うと確かに

そうですねと答えていた。

また、瞑想歴20年だと言う区役所勤務の彼は「来月の

瞑想教室は、何日の開催ですか?」と聞くので、来月は

開催できないことを説明した。すると、「それは困る。

日浦さんに、お金持ちを紹介しますね。」と言って、

携帯電話をかけて、もう話がついたと言う。

おお、持つべきは善き友か、などと勝手に思いながら

少し希望が湧いた。

しかし、その実は、その紹介先が、またまた波乱万丈の

人生を体験させてくれる詐欺師の処とは知らなかった。

今日も飛ぶとぶ昼夜を問わず。