サービスの意味

僕がバイトしていた京都の国際クラブは、

「ベラミ」という名の高級店であった。

べラミのことは、過去に記事を書いた事が

ある。その店の名を知る人は、もう現代に

いないだろう。

当時べラミは、お客が椅子に座っただけでも

数万円とられる高い店だと噂さされていた。

そして、50人のボーイ、300人のホステス、

厨房の調理人達の給与は、なんと1晩の売り

上げ額から支払われるのだとマネージャーは

語った。店の一晩の平均売上高は数千万円だ

そうだが時に1億円近い売り上げがあるとも

言った。19歳には金額がピンと来なかった。

 

ボーイの仕事にも慣れてくると、薄暗い照明の

中でさえ、あのホステスは美人か、そうでないか

ハッキリ分かるようになり、またテーブルに座る

客の身分や、会話の中身まで分かるようになった。

 

そこは、自慢話と嘘と虚勢の会話が花咲く夜の

社交場だ。色んな人たちがやって来て、様々な

人生の一面を見せてもらった。ここには書き

きれないが、日浦にとっては、実に素晴らしい

社会勉強になったのだ。

学生同士の新たな交流が生まれ、地位や名誉も

あるお客と仲良くもなる。彼氏のいないような

ホステスから食事やデートにも誘われる。

そして、様々なジャンルの貴重な情報を知る

ことの出来る場であった。それらの情報を

管理、コントロールしているのはママだった。

 

日浦は、ホステスから好感をもたれたらしく、

支援も受けるようになった。

いったい、どのようにして?

ある夜、某ホステスがこう言った。「時々、

私のいるテーブルに来なさい。そして、汚れた

灰皿とビールグラスを交換し、テーブルの上を

綺麗に拭くのよ。分かった?」と。

見習い的な立場であるから、「はい、分かり

ました。」と言うわな。

ホールには、沢山の御客達、ホステスがいて、

多くのボーイたちが動いているから、そこは、

あたかも戦場のようにごった返している。

その様相を見て、ホステスの言うことが分かった

のだ。つまりテーブルごとの気配り、サービスが

かなり不足しているのだと理解した。客の中には、

サービスの悪さに不満な者もいるのだ。それゆえ、

接客中のテーブルへ行き、床面に片膝をついて、

「いらっしゃいませ」と頭を下げる。そしてまた

「失礼します」といって、灰皿とビールのグラスを

交換し、テーブルを拭く。

するとホステスは、お客に言うのだ。「ターさん、

彼は苦学生なの。お小遣いあげなさいよ」と。

そういわれたお客は、財布から1万円札をだし、

「チップだ」そういって、僕にくれるのだった。

なるほどね!グラスや灰皿を交換しろと言うのは

ホステスの命令ではなく、親切心であったわけだ。

サービスされた客も気分が良いと言うものだ。

高級べラミに来るのは、ステータス性の高い裕福

層の客であるから、サービスされることに満足し、

その対価をくれるのだ。日浦にチップを払うことを

接待客にもアピールできるのだ。

なるほど、こうやってお金を廻すのか、と思い着く

ことがあり、経済学部も出た気分だった(笑)

 

それを真似するホステス達も現れて、毎晩のチップ

合計が10万円から5万円も得られたのだから、凄い

ことだった。なぜなら、散髪代が400円の時代に、、

であるから。とは言え、チップをくれるホステスだけ

のサービスは、ダメなんだ。全体の流れを観察する

ことがミスを少なくすることも知った。

余談

現代社会に於いて、時給千円のバイトをする人も

沢山いるだろうが、日浦の体験が役立つといいのだが

難しいだろうね。でもね、記事「錬金術」を読んで

見るといいよ。