雪上に立つ

もうしばらくは、男親が娘を育てた体験を

語ろう。読者に役立つかも知れないから。

 

ある日、娘たちの言動に変化があったことを

認めた。

なんか言いたいことがあるのか?と聞けば、

お父さんには、娘の気持ちが分からない!

そういった。

親子の絆が切れそうな心理状態にあった。

 

お前たち、裸足のまま玄関前の雪上に立て。

そういった父親の威厳に圧倒された娘は、

裸足のまま雪上に立った。

ぼさぼさと雪降る日、玄関前のアプローチには

50㎝ほどの積雪があった。

雪上に立たせる訳を説明しない。娘たちも

その訳を聞きはしない。三人の頭と肩には、

雪が積もり、あたかも路傍のお地蔵さんの

様相だった。

笑いたいのを我慢して約15分後、

次女は「パパ、ごめんなさい」と言ったが、

父は、それを完全無視していた。

30分が経った。足は刃物で切られたように痛い。

45分を経過したが、娘たちは微動だに動かない。

この子たちは、根性があるなーそう思った。

雪上に立つこと約1時間を経たとき、娘たちの

オーラが変わった。その瞬間、二人の娘たちは、

僕に抱きついてきた。そして二人が同時に同じ

言葉を発した。

「パパ、有り難う!」と。

娘たちが言葉にしたのは、ごめんなさいでは

ない。ありがとうなのだ。

この言葉の違い、意味が分かるだろうか?

子供を育てた親なら、分からなければならない。

この時を境にして、娘たちは変わった。

 

娘たちが結婚するころ、雪の中に立たせた

父親のハートを理解した、と言っていた。

世間の親なら、子供だけを立たせて、自分も

雪上に立つことは無い。そういっていた。

雪上に60分も立つ辛さは、父も同じく辛いと

分かっていた娘たち。

何も説教せず、無言のまま家事全般と子育てと

会社運営をこなした父は、同級生の父の中には

居なかった稀有な存在だと言った。

口下手な男親の取った行動は、すべて娘を想う

ゆえのことだったと娘は知った。

やるべきことをやっている無言の父親の背中は、

雄弁だったのだ。

 

近所や親せきから、どうしてあのように良い子に

育てたのか?とよく聞かれたものだ。

口先だけの教説では、優れた子供を作れない。

ウソを言わない人材教育は、貴重なのだ。

良い子に育てるには、言葉さえも要らない。

 

という子育てを体験した。